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Philip の ちょっといい話

「メサイア」

 クリスマスになるとさかんに演奏される音楽に、ヘンデルのオラトリオ「メサイア」があります。「メサイア」というのは、ヘブル語の「メシア」、ギリシャ語の「キリスト」のことで、つまり「救い主」、「救世主」ということです。この音楽は、その名の通り、救い主について歌ったもので、全体が三部に分かれています。第一部ではキリスト降誕の預言と成就、第二部ではキリストの受難、第三部では復活と永遠のいのちが歌われています。「ハレルヤ」コーラスや「アーメン」コーラスは有名です。クリスマスの賛美歌「諸人こぞりて」も、「メサイア」の中から編曲されたものです。

 おどろいたことにヘンデルはこの大作を1741年8月22日から9月14日までの、わずか24日間で書き上げています。「メサイア」の歌詞のすべては聖書のことばですが、聖書のことばがヘンデルにインスピレーションを与えたのでしょう。「メサイア」は教会で演奏する礼拝音楽としてではなく、劇場で演奏されるものとして作られました。1743年にロンドンではじめて演奏され、「ハレルヤ・コーラス」が歌われた時、その場にいた英国国王ジョージ二世が、その神々しさにおもわず、起立して、キリストをあがめたというエピソードはよく知られているところです。

 「メサイア」が最初に演奏されたのは、アイルランドのダブリンでしたが、それは、病院のサポートと囚人たちの待遇改善のためのチャリティ・コンサートでした。ヘンデルは、その後も「メサイア」演奏による収入のすべてを慈善事業に寄付しました。ヘンデルは1753年に失明した後も、オルガンを弾きながら「メサイア」を指揮し続けましたが、1759年4月6日、「メサイア」の演奏中に意識を失い、その月の14日、彼は世を去りました。「メサイア」はヘンデルの作品の中で最も名声を博したものであり、彼が死ぬまで演奏し続けたものでした。

 「メサイア」は今も、世界の各国で歌われ、多くの人々の慰めとなり、励ましとなっていますが、それは、「メサイア」の主題である「救い主イエス・キリスト」ご自身が、今も変わらず、人々の慰めであり、励ましだからです。ヘンデルは「メサイア」のプログラムにかならず次の聖書のことばを書いています。「確かに偉大なのはこの敬虔の奥義です。キリストは肉において現われ、霊において義と宣言され、御使いたちに見られ、諸国民の間に宣べ伝えられ、世界中で信じられ、栄光のうちに上げられた。」(テモテへの第一の手紙三章十六節)ヘンデルは、キリストこそ、この音楽の主題であると言っているのです。クリスマスには、多くの賛美歌を耳にし、また歌うことでしょうが、そうした音楽を通して、救い主を見上げましょう。

(2003年12月)

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